前川将吾

足元は、ウクライナでの戦闘激化と欧米の経済制裁の強化で資源価格の高騰とリスクオフが続いており、相対的に悪影響が大きい欧州ではスタグフレーション(物価上昇かつ景気後退)懸念も高まっています。一方、2大大国の米中の景気が大崩れするとの見方はまだ限定的です。 ①米国はロシア関連の“直接的な”経済・金融面の悪影響が限定的、②エネルギー価格の高騰は打撃となるが、米国は産油国であるほか、価格高騰に対処する政策や国内外のエネルギー供給増加も悪影響を“一部”相殺するとの期待、③長期のインフレ期待が落ち着いていれば、“過度な”金融引き締めは実施されないとの見方、④そもそも足元の景気は底堅く、今後は経済再開も期待され、雇用は減少するどころか人手不足が続きそう、などの理由から、現時点では米国のスタグフレーション懸念は限定的と見られています。 政府が今月5日に発表した今年の実質経済成長率目標は「5.5%前後」で、国際機関やエコノミストの見通しよりも高く設定されました。今後は、秋の共産党大会に向けた財政・金融政策による景気下支えや、それを反映したクレジット・インパルスの反転などが期待されます。 以上の材料を踏まえれば、現時点では「世界的なスタグフレーション」はリスクシナリオといえるかもしれません。しかし、少なくとも「世界的なスローフレーション(物価上昇かつ景気の“鈍化”)」には十分注意したいところです。